【公務員からの教え 3-21】 オレのゴットハンドに任せろ!

昨日の食品衛生監視員さんの話の続きです。
今までの登場人物紹介はこちら
飲食店の営業許可の窓口業務関係で分からないことや、イレギュラーなややこしい相談ケースなどは、隣の係の監視員さんに聞きにいくことが常識化していた。
監視員さんは、保健センターに数名おられたのだけど、皆さん非常に専門知識に精通しているのはもちろん、人間的にもユーモラスな人が多かった。
窓口業務で不明点があると、まずは女性監視員さんの西沢さんに聞きにいくことになっていた。

というのも、その係の係長から、「まずは西沢さんに聞いてね」と言われていたからだ。
ただ、ほとんどの場合、西沢さんに聞きにいくとそこの係長である山口係長が登場することが多かった。
山口係長は、50歳くらいのりふっくらした体型で、メガネをかけられ頭の頭髪はかなり厳しい状況なものの笑顔が素敵な紳士的な係長。
この山口係長も監視員という立場のためもちろん薬剤師免許を持っているのだけど、風貌からはまるで薬剤師らしい風格は感じられない穏やかな係長だった。
いや、穏やかというより、雰囲気からしてスケベさがにじみ出ているといったほうが適切かもしれない。
「すだちゃん、また分からんことあるの?
早く受付を一丁前にできるように覚えてよ。
でもな、分からないことあったら何でもオレたちに聞けよ。
いや違うな、まずは西沢さんに聞いて、西沢さんで分からなかったらオレの出番やからな。
(右手を妙な動きに動かしながら)
オレのな、このゴットハンドに任せてもらったら何でもできるからな。(ニヤッ~)
まあオレのゴットハンドはな、すだちゃんみたいな青二才とは比べ物にならないテクニックでだな・・・・・」

と話が長引きそうになると、他の監視員さんがすかさず笑いながら、
『係長、いま設備基準に教えてるところですから、邪魔しないでくださいよ』
と話を止めようとする。すると、
「なぬっ、
すだちゃんはな、オレのゴットハンド話を聞きたくて仕方ないみたいやぞ。
なっ、そうだろ? 
もっとオレの武勇伝を聞きたいだろ??素直に言えよ、
(場の雰囲気に流され「はい・・・」と言う)
ほら、そうだろ、よく分かってるなやっぱり。
早く仕事覚えたらな、オレみたいなゴットハンド使いになれるからな、
しっかり覚えろよ、がんばるぞオイ」

という感じで、誰かとお喋りやコミュニケーションをとるのが大好きな係長だった。
このような感じで西沢さんや他の監視員さんに色々教えてもらっている時も、いつのまにか横に立っておられて、どのタイミングでちょっかいをかけようかつねにタイミングを見計らっておられた。
まあ山口係長のような人なっつこい係長というのは、配属されたばかりの頃はとにかくありがたい存在だ。
特にわたしの直属の上司の手島係長は、窓口業務や日常業務のことはほとんどちんぷんかんだったわりには、日々「新人たるものああしろ、こうしろ」「若手はこうしないと」というまずは精神的な説教や話から入ってくる上司。
一方、山口係長は、その人なっつこさで、まずは相手との距離をぐっと縮め、相手の人心を把握してから、1つ1つ教育をしていくタイプ
どちらのスタイルがいいのかは状況によるものだけど、新人にはやはり山口係長のほうがとっつきやすいかもしれない。
そりゃ誰だって日々怒られぱっなしよりは、アメとムチの使い分けで教育されるほうがいいだろう。
結局、わたしの在職中に山口係長のような係長とはこれ以後一緒に働く機会はなかった。
今思えば山口係長のようなコミュニケーションスタイルは非常に素晴らしいものだったと思う。
結果的にわたしは、保健センター在籍機関中、他の窓口業務よりも食品衛生関係の受付業務が一番詳しくなり、楽しくなったのも山口係長や他の監視員さんのおかげだと思う。
そして結果として、わたしは若手への教育方法の1つの手段として非常に有効に感じ、今はわたしがこのコミュニケーションスタイルを真似て新人スタッフの教育にも利用させてもらっている。
仕事なので厳しくことも大事だが、いきなり精神論から入る教育スタイルは、今の若手にはあまり合っていないように思う。
まあ、「面倒くさい人だな~」って思われているかもしれないが。。(笑)
続く。

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