【公務員からの教え 3-2】 理想と現実とのギャップ

朝、カーテンの向こうから差し込む太陽の光にすがしく起き、日経新聞で最新の経済情報をチェックしながら朝食をさっと食べる。
横ではコーヒーのボコボコという沸き立つ音、テレビの朝のニュースが爽やかな朝を感じさせてくれる。
そして、お気に入りのスーツに着替え電車に乗り込み出社。
僕を待っているのは、空高くそびえるこのビジネス界隈では有名な高層オフィスビルだ。

守衛さんと「おはようございます!!」という挨拶を交わし、高速エレベーターで上階へ。
エレベーターはこのビルに勤めるビジネスマンで混雑しているが、いつものことなので気にはならない。
そして、エレベーターを降りるとそこが僕の働くオフィスだ。
ガラス張りの窓の向こうには、オフィス街のビル群が立ち並ぶ。
フロアにはすらっとしたスーツで身を固めた同僚たちは首からは身分証ストラップを垂らし、「○○のプロジェクトの件だけど」「来週のミーティングまでに○○準備しとかないとね」とすでに仕事モードだ。
広く間取りをとられたオフィススペースは雑多としながらも活気に満ち溢れ、「あぁ~こここそビジネスの最前線だ」と感じさせてくれるには十分な雰囲気。
そう、これがわたしを含め、当時の多くの学生が持っていたく会社・職場のイメージだったかもしれない。
時は2001年。ホリエモンやら村上ファンド、六本木ヒルズ、豪華オフィスなど威勢のいい活気ある言葉が世間で飛び交っていた。
インターンシップ制度(会社で一定期間学ぶ実習制度のようなもの)はまだ当時広く普及しておらず、またネットを使った就職活動も一般的ではなく、学生が「会社」という組織を体験できる場所は多くはなかった。
つまり、テレビやメディアから流れてくる「会社」こそがそのまんまのイメージになった訳だ。
そして、わたしも↑とまではいかないまでも、大阪市役所の格好いい本庁舎オフィスで働けるものだとばかり思っていた。
多くの同期生もそう思っていたことだろう。
が、わたしがいまいるのは築何十年はゆうに経過しているだろう、かなり古びた2階建ての庁舎。
2階建てなのでエレベーターはなく、明るく窓られた大きな窓など一つもない。
もちろん庁内の電気も薄暗く、昔ながらのアルミ越しの窓にセロハンテープで貼ったと思われる跡があちこちに残っている。
庁内の壁は黒ずみ、ところどころヒビ割れを起こし、庁舎全体がドヨーンとした雰囲気に包まれていた。
そう、まさに「ザ・役所」という感じの庁舎だ。
この古く、まるで活気のない庁舎で少なくとも数年間は働かないといけないかと思うとどうにも気持ちが盛り下がってきた。
古いよりは新しいオフィス
汚いよりはキレイなオフィス
ドヨーンとしたオフィスよりは活気あるオフィス
で働きたいと思うのは誰でもそうだろう。
今日ははGW前の最後の平日のお昼11時半くらい。
今日が終わればしばらくの間はGWだ。
そうこうしているうちに、わたしをこの庁舎まで案内してくださったおっちゃん職員さんが全職員を職場の片隅に集めた。
そう、わたしの自己紹介の始まりだ。
続く。

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